NEW YEAR 20112011/01/01 23:00

あけましておめでとうございます。

恒例のウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートは見(聴き)ましたか?今年は地元オーストリアのウェルザー・メストでした。まじめなメスト、演奏もおなじみのお楽しみ演出もその人柄がにじみ出るような感じでしたね。
そのニュー・イヤー・コンサートへ日本人で初めての指揮者となったマエストロ小澤征爾は腰の調子が良くならず、ちょっと心配ですが、日本人の国際コンクール1位などのうれしいニュースも年末にかけて相次ぎました。その一方でショパンコンクールでは、本選に一人も残らないという状況をみると、音楽家の育成での課題も見えてきそうです。

さて、日本でも、年末は第九やメサイア、年が明けてからはシュトラウス・ファミリーのワルツやポルカを楽しむ習慣が少しづつ根付いてきましたが、加えてドボルジャクの新世界交響曲もよく演奏されますね。何かの拍子で始まった習慣が継続するのは伝統にもなるのですが...

芸団協の文化政策への予算を増やすための署名活動では、60万名以上の署名が集まりました。ありがとうございました。1月の通常国会へ提出されるとのことです。ある人には100万名超くらい集めないととも言われたようですが、政府を動かすにはさらに署名がひつようなのかもしれません。一方、メトロポリタン・オペラなどを初めとするビッグネームの来日公演が今年はありますが、その反面、事業仕分けの波紋は今年から徐々に影響が目に見えてきそうです。

閑話休題、ウィーンでは伝統のワルツを年初に楽しんだり、実際に踊ったりローカルの伝統の文化ですが、その代名詞の一つであるニュー・イヤー・コンサートも外国人が押しかけ、世界に生放送されるようになりました。
昔と違い、年末や正月の雰囲気は様変わりしました。自然や歴史や文化が徐々に失われるなか、何を守って行かなければならないのか。
考えてみる必要があるのではないでしょうか。

2011年1月 ベリオのシンフォニアを聴きつつ

アリス=沙羅・オット ピアノ・リサイタル2011/01/15 19:03

アリス=沙羅・オットのピアノリサイタルを聴いてきました。
曲目は
・メンデルスゾーン/厳格な変奏曲ニ短調Op.54
・ベートーヴェン/ピアノソナタ第21番ハ長調Op.53「ワルトシュタイン」
・ショパン/三つのワルツOp.34
  ワルツ2番変イ長調
  ワルツ3番イ短調
  ワルツ4番ヘ長調
・ショパン/ワルツ6番変ニ長調 Op.64-1
・ショパン/ワルツ7番嬰ハ短調 Op.64-2
・ショパン/スケルツォ2番変ロ短調 Op.31

アンコールは
・ショパンのノクターン嬰ハ短調
・ベートーヴェンのエリーゼのために

ちょうど発売されたばかりのベートーヴェンのアルバムからワルトシュタインと日本版ボーナストラックのエリーゼのためにで、昨年発売のショパンワルツ集からの選曲にスケルツォ2番が加わった形です。

あくまでも繊細で荒々しくなったりしない機微にとんだ演奏が彼女の持ち味。アンコールのエリーゼのためになどはその象徴といえるかもしれません。激昂したりせず内に秘めた思いをわずかな変化で表現するあたり、日本の伝統芸能にも通じるところを感じます。

ワルトシュタインなど、ベートーヴェンらしくないなど賛否両論ありそうですが、私は好きです。心洗われる2時間でした。

ショパン・コンクール・入賞者ガラ・コンサート2011/01/19 23:53

本日は昨年10月に開催された、ショパン国際コンクールのガラ・コンサートでした。プログラムからかなり遅くなると思われましたが、やはり10時過ぎに。とりあえず、アンコール曲を演奏者順に。

第5位フランソワ・デュモン
 ドビュッシーの月の光

第3位ダニール・トリフォノフ
 バッハ無伴奏ヴァイオリン・パルティータからガボット&ロンド、ピアノ編曲ラフマニノフ

第2位ルーカス・ゲニューシャス
 曲目不明、ちょっとジャズっぽい曲
 (→•レオニード・デシャトニコフ/映画「Target」より"Foxtrot"とのこと)

第2位インゴルフ・ヴンダー
 モーツァルトのK.331の3楽章トルコ行進曲のアレンジ(ヴォロドス編)

第1位ユリアンナ・アヴデーエワ
 バッハのパルティータ1番よりジーグ

<追記>
ヴンダーとアヴデーエワ両名の演奏曲が同じピアノ協奏曲第1番ということでしたが、前者がバデレフスキ版、後者がナショナル・エディションということでオーケストラの違いも楽しめます。トリフォノフが弾く際はエディション・コンポーザーという記載があるので、おそらく改訂される前の初版のようで、こちらも聴いてみたかったところ。
さて、この二人の協奏曲はヴンダーはまじめさが滲むような演奏。テンポもすこしゆったり目で丁寧。対するアヴデーエワはやや早めのテンポで割と自由に崩して揺らし、しかしオケとの息はぴったりの演奏で、それぞれの個性がよくわかる演奏でした。
個人的にはアヴデーエワのおもしろさに心惹かれるものがありました。

アンコールにも個性があって、そちらでも楽しめた贅沢な3時間だったと思います。

エレーヌ・グリモー ピアノリサイタル2011/01/22 12:45

日本でもおなじみのエレーヌ・グリモーのピアノリサイタルツアーの神戸公演。

各地で同じプログラム、
・モーツァルト/ピアノソナタ 第8番イ短調K.310
・ベルク/ピアノソナタ Op.1
・リスト/ピアノソナタ ロ短調 S.178
・バルトーク/ルーマニア民族舞曲 Sz.56
アンコールに
・グルックの妖精の踊り(ピアノ編曲バージョン)
でした。
先日のアリス=沙羅・オットが優しいさわやかな風で全身を包み込むような感じとすると、グリモーは竜巻のようといっていいかもしれません。
リストのピアノソナタは圧巻。有無を言わさずグリモーの奏でる音の世界に引き込んでいきます。

1曲目のモーツァルトも出だしの左手の刻みもいきなり付点でもついたかのように均等のリズムでなく、一瞬ジャズ風アレンジで弾いているかのような感じを受けるくらい印象的な始まり。その後も意図的な崩しこそ潜めますが、しかしグイグイ突進していく。

2曲目のベルクもあまり取り上げられない作品でこだわりを感じます。

曲目構成的に重たいリストで終わらせず、バルトークがアンコール風の趣き。

まったく同じプログラムのCDが発売されたばかりで、レコード会社の思惑もあるのでしょうけど、グリモーは生で聴かないとそのすごさは実感できないと思います。コンチェルトもよいですが、やはりリサイタルですね。

余談ですが、神戸文化ホールは座席にもよるのでしょうが、スピーカからの音と思われるサーというノイズが常に聞こえていたのが残念。
気をつけてもらいたいところです。

アンサンブル・ゼフィーロ2011/01/22 23:27

・ベートーヴェン/パルティア管楽八重奏曲 変ホ長調 Op.103
・ベートーヴェン/ロンディーノ 変ホ長調 WoO.25
・モーツァルト/セレナード第12番 ハ短調 K.388(384a)
・ロッシーニ/歌劇「セビリヤの理髪師」から
 序曲、
 陰口はそよ風のように、
 私は町の何でも屋、
 今の歌声は心に響く、
 黙って、黙って、静かに!

アンコール
モーツァルトのフィガロの結婚や魔笛などからの編曲

楽しませてもらえた演奏会。

アンサンブル・ゼフィロは古楽器のアンサンブルで、このプログラムではオーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンそれぞれ2の8名での演奏。一級のピリオド楽器の演奏もすばらしかったのですが、やはり注目はナチュラル・ホルン。演奏だけでなく、身振りなどでもいろいろ趣向あり。
アンコールの最後、魔笛のパパゲーノのアリアでも、オーボエのアルフレード・ベルナルディーニが演奏を始めようとして楽譜をめくると見当たらない!ということで、慌てて舞台裏に取りに行くと、戻ってくるのを待たずに演奏を始めてしまいます。観客があっけにとられると、パパゲーノが奏でるパン・フルートの音階を舞台裏でベルナルディーニが演奏。しかし次第に調子が外れ、みんな笑いをこらえながら聴いてました。曲が終わると、ベルナルディーニが楽譜を持って戻ってきて。。。
サービス精神満点の舞台でした。