大阪センチェリー第145回定期2009/10/15 23:58

大阪センチェリーの定期、指揮は小泉和裕。ピアノ独奏にアリス=沙羅・オット。
・リスト/ピアノ協奏曲
・ブルックナー/交響曲第5番

オットのピアノは高い集中力で華麗に弾きこなす。オケは12型でしたが、ピアノが埋もれてしまう所もありました。超絶技巧練習曲をあれだけ完璧に弾くのですが、なぜか意外なところでミスタッチ一歩手前のちょっと引っかけるようなところがあるのが不思議です。ほとんど気にならないのですけどね。


メインのブルックナーは、ブルックナー特有のオルガン的響きとして溶け合うには至らず、また所々雑なところもありました。金管は響きが悪くうるさく聞こえ土台と為る弦が弱い。第4楽章のコーダも最後のスタミナが残っていなかったのか、大伽藍まで数歩手前。
どうやら今回のブルックナーシリーズは公演前に数日間にわたってレコーディングを行っていたとのことで、集中力もスタミナも維持できなかったのかも知れません。

余談ですが、せめて最後の音が鳴った後、残響が消えるまでは拍手もブラボーも控えて欲しいものです。
ブルックナーは特に、静寂に始まり静寂に終わる。

※オットの演奏は、テレビ収録されており、何か特集番組で使われるようです。

ハイドン『天地創造』/ウィーン楽友協会合唱団2009/10/22 23:08

さすがでした。
ウィーン音楽祭2009OSAKAで、ウィーン楽友協会合唱団の合唱によるハイドンの天地創造を聴いてきました。管弦楽には関西フィル、独唱には幸田浩子さんほかを迎えての演奏です。
天地創造は、ミルトンの失楽園をベースにした台本にしたオラトリオです。ヘンデルのメサイアは頻繁に演奏されますが、天地創造ももっと演奏されても良い曲なのですが、没後200年というのにごく少数の曲が取り上げられるだけで、寂しい限りです。

第九なども特にそうなのですが、合唱付きのオーケストラ曲の場合、プロの合唱団でなくアマだったり、各声部の人数やバランスが悪かったり、さらに音色や音程が合っていなかったりすることが多く、大人数になればなるほど音量はあれど、音楽はぼやけてしまいます。

リプキン説によるマタイ受難曲のように、各声部をソリスト級の声楽家でごく少人数人合唱による演奏の澄んだ響きを理想とすると、満足できる合唱にはなかなか出会えません。オケに加えて合唱団にかかるコストを考えると仕方がないのでしょうけれど。

さて、ウィーン楽友協会合唱団は立場的にはアマとして通しているようですが、楽友協会を本拠にカラヤンをはじめ、演奏会や録音でも活躍するトップクラスの合唱団です。

関西フィルは弦のビブラートを控えたピリオド奏法で、1stヴァイオリン7名~コントラバス3名に管とティンパニ、チェンバロという編成。
序奏ではちょっと不安定な面も見え隠れしましたが、ヨハネス・プリンツのタクトに応えて頑張っていました。


合唱は、さすがと言うほかありません。大音量でもうるさくなる事は無く、どの声部にも弱さは見られませんし、息の長いクレッシェンドや、ピアニッシモの表現も見事。

幸田浩子さんをはじめ独唱者もすばらしかったのですが、オケと合唱に比べビブラートをもう少し抑えればと思う所がありました。幸田さんは自分の歌っているところ以外でも音楽に合わせて身体を動かしたり、幸せそうな表情をみせており、聞いている方も幸せな気分になりました。

24日にはブラームス自身の指揮でウィーン楽友教会合唱団が初演したという『ドイツレクイエム』が演奏されます。今から楽しみです。

ブラームス『ドイツ・レクイエム』/ウィーン楽友協会合唱団2009/10/24 22:18

今日はウィーン音楽祭2009 in OSAKAの最後を飾る『ドイツ・レクイエム』がいずみホールでありました。

1812年設立されたウィーン楽友協会。合唱団は1858年にウィーン楽友協会の付属団体として設立され150年の歴史を持ちます。1867年には最初の3楽章だけですが『ドイツレクイエム』を初演。その合唱団の来日公演はなんとカラヤンとともにヴェルディのレクイエムの演奏で来日してから実に30年ぶりとのこと。

指揮は大植英次で管弦楽は音楽監督を務める大阪フィル。弦は12型、管とハープのほかにパイプオルガン。

第1楽章、ヴァイオリン、ピッコロ、クラリネット、トランペットなど明るい音色を使わず静かに始まりしっとりと「悲しむものは幸いである」と始まると、もうそれだけでぐっときてしまいます。第2楽章、「草は枯れ、花は散る」の部分も美しく、中間部の「見よ、農夫は実りを~」でハープとピッツィカートで歌われる部分は天上の響き。再び「人はみな草のごとく」がフォルテで歌われる部分の力強さ。第3楽章で三原さんのバリトンは力強く、第5楽章のソプラノは母の愛と慰めを釜洞さんがやさしく歌う。第6楽章でおそらく初めて合唱にフォルテッシモが出てくる部分「ラッパが響いて~」で頂点を築き、その後壮麗なフーガで主を讃えるこのあたりも見事。第7楽章は一転穏やかに死による安息を「労苦を解かれて休み~」と歌われる部分、再びしっとりと歌われ、ハープの上昇する分散和音と管楽器の弱音でそっと曲を閉じる。
曲を終え、大植さんが手を下ろすまで、おそらく30秒くらいの静寂。この静寂こそ今日の演奏のすばらしさを物語るものだったと思います。

ウィーン楽友協会合唱団はとにかくどの声部もオーケストラに負けない力強さがあり、弱音も美しく温もりがあり、ブラームスの信仰告白たるドイツ・レクイエムにふさわしい歌声と演奏でした。
シンフォニーホールで大勢に聴かせたいという意見も聴かれましたが、総勢75名ほどの合唱がホール全体を隅々まで充実した響きで満たす、この幸せはやはりいずみホールで聴くからこそ体験出来るものだと思います。

今回の来日ではこの大阪公演のみ。ムジークフェラインを模したいずみホールのウィーン楽友協会との協力関係により初めて実現した快挙だと思います。次の来日公演をまた近いうちに聴けるように祈ります。

PAC第28回定期2009/10/25 17:54

兵庫県立芸術文化センター管弦楽団の第28回定期
曲目は
・ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第二番
・リムスキー=コルサコフ/『シェラザード』
ピアノ独奏はアレクサンドル・メルニコフ、指揮はケン・シェ

1楽章、「海とシンドバットの船」は重くかつ大人しく、これから冒険が始まるという感じがしません。大海原の波のうねりも定規で測ったような繰り返しに聞こえます。中盤ようやく盛り上がりを見せますがそれまで。
2楽章、「カランダール王子の物語」、ソロを受け持つファゴットやヴァイオリンなどは雰囲気良く色気を感じさせますが、オケはやはり大人しい。
3楽章も愛を語り合うハズが眠たそうな雰囲気。
4楽章は盛り上がりを見せますが、やはり重たい。
全体的にノリが悪く、冒険のわくわく感に乏しく、ロシア的な情緒が希薄に感じがしました。寝物語だから夜の雰囲気、では無いと思いますが、ケン・シェ氏の解釈があっさりというのか行儀がよいというのか。

PACは技術はあるのだから、もっと個性を出して欲しいのですが。

ヤルヴィ/シンシナティ交響楽団2009/10/31 19:28

パーヴォ・ヤルヴィ指揮/シンシナティ交響楽団の兵庫公演。大阪国際ヴェスティバルの会場であったフェスティバルホールが建て替え中のためのPACでの特別公演。

バーンスタイン/キャンディード序曲
バーンスタイン/ディヴェルティメント
ガーシュウィン/ラプソディ・イン・ブルー
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」
ピアノ独奏は、クリスティアン・ツィマーマン

シンシナティSOの響きはすばらしく、それぞれの楽器の音がブレンドされて一つのオーケストラとしての音として聞こえながら、各楽器の音色もしっかりと聞こえます。CSOば舞台に弦も管も雛段を設けずに演奏。唯一の段差は指揮台のみ。ホール前方の座席では舞台奥の奏者が全く見えていなかったと思われます。

ヤルヴィのタクトは見事なもので、ラプソディ・イン・ブルーなどは頻繁にある独奏者とオケとのやりとりとでの不揃いが目立ちやすいのですが、完璧と言って良いほど。ツィマーマンのラプソディ・イン・ブルーは30年ぶりとのことで、しかもこういった贅沢な組み合わせでのラプソディ・イン・ブルーは滅多に聴けるものでは無く会場も沸いていました。

「新世界より」では、ヤルヴィはテンポをかなり柔軟に伸長させ、聞き慣れた曲から新鮮な表情を引き出しました。

唯一問題があったとすれば、プログラム前半に多彩な楽器・打楽器による音色と迫力を持つ曲が配置されて、それにより「新世界より」が少し地味に聞こえてしまったことかもしれません。